3代目経営者として M&Aという大きな決断

株式会社冨士鍍金工業所
譲渡企業:株式会社冨士鍍金工業所
設立年月日:1956年
事業内容:半導体搬送装置部品や工作機械部品などの鍍金加工
成約時の御年齢:51歳

譲受企業:マラトンキャピタルパートナーズ株式会社
設立年月日:2021年
事業内容:プライベートエクイティファンドの組成、運営、管理に付随する全ての業務

祖父の代から続く冨士鍍金工業所の3代目だった馬場秀行氏。安定した利益を計上し、経営は順調であった一方、人生として別の道に進んでみたいという思いもありました。そこで、あらためて自分自身と向き合い、会社の将来も考えた結果、M&Aという決断をしました。

2023年にマラトンキャピタルパートナーズ株式会社と資本業務提携を締結。そして、プロ経営者を招き入れ、馬場氏ご自身は経営の第一線から退きました。M&Aを決断するに至った背景や心境はどのようなものだったのか。馬場氏ご本人に伺いました。

父から継いだ家業 順調な経営とは裏腹につのる思い

馬場氏:当時はちょっとわからなかったけど、モヤモヤした気持ちがどこかにあった状態で経営をしていたんだと思います。自分はそれほど経営者に向いていなかったのかな。実際、親父が引退して自分が代表になり、4~5年過ぎた頃には「自分はどちらかというと、おそらくプレーヤー。誰かがトップでいてもらったほうが、もっといい形になるんじゃないかな」、と。

売上も上がって利益は出ていても、この気持ちはなくなりませんでした。仕事をしていてもどこか違う…というのがM&Aを検討する最初だったと思います。

後継ぎに親族をという選択肢は取りたくなかった。たぶんね、私がやってきた20年と、親父がやってきた20年。それらと、今後の20年は全然違って、必ず厳しい経営環境になるだろうと確信していました。それをあえて、親族に『どうぞ』というのは…。私の娘には継いでほしいと言ったことはありません。確かにそれは選択肢の一つではあるけど、彼女の選択肢を縛ってしまうことにもなりかねないので、それはやりたくなかったです。

また、私は上場株などの株式投資を長年してきていました。一人の投資家として株の売買を見たときに、会社の状態が良いときに売却を行うのは当たり前の感覚です。非上場企業のM&Aという切り口で見た場合でもそれは同じであろうと思っていて、自分の会社の売り時というのを真剣に考えようと思いました。

全力で応えてくれるM&A仲介会社を選びたかった

M&Aをすると決めてからは、1か月間で10社以上のM&A仲介会社の担当者と会いました。当時は、M&Aに関してほぼ知識はありません。わかっている人のお話を聞かないと、自分がどう進めていいかわからない。ですので、いろいろな人に会おうと思っていました。

大半の人は営業的な話がものすごく多かったですね。初めて来てくれて、M&Aの話をする。それはそれでありがたいのですが、理屈的にはM&Aはそれほど難しいものではないと思っていました。というのが、どこの仲介会社も同じような説明ばかりで、きっとノウハウに差がなかったり、決まったやり方があるんじゃないかなと思ったからです。本当に面白いのですが、どの会社もみんな同じような話ばかりなんです。

しかし、M&A worksの安藤さんはそれを分かって話をしてくれました。彼は営業の話はまったくせず、自身の仕事に対する向き合い方や、価値観、さまざまな経験を語ってくれ、それを通じて自分自身が整理されていく感じがしました。私はいろいろ会話をするうちに、ものの考え方、人との接し方、仕事の考え方、本当に多くの部分で共感することができました。最初の面談で2時間半ほど話をしてしまい、帰る際には「これで終わりになる関係だとは思わない。またね」と話したのを記憶しています。

自分が仕事をする上で大事にしてきたのは、誰であろうと対等な立場で仕事をすること。『私も全力でいくので、相手も全力で応えてください』というスタイルでなければ、ビジネスにならないと思っています。そういったことから、M&Aを進めるのであれば、お願いする会社は一つだけと決めており、彼以外の選択肢はなかったかなと思います。

いま思えばですが、彼以外のM&Aworksの社員にも何度も会っていますが、同じアイデンティティを持って仕事に取り組んでいると感じていて、頼んでよかったと思います。

業界につきものの問題も冷静に対応できた

私はM&Aに関して初心者なので、ある程度はお任せするしかない。唯一お願いしたのは、『仕事をやりきってほしい』ということ。やりきらない仕事は必ず後悔しますから。それ以外は特に言っていません。

M&Aのスタートは、私の将来描く理想の人生について話し合うことからでした。今できることと、できないことのすり合わせをしていき、方向性を固め、納得した時点で、実際のM&Aのプロセスに移っていきました。候補先の相手の説明も受けながらイメージを膨らませ、さまざまな可能性を模索する中で、ファンドがいいだろうという方向にまとまっていきました。

僕らの業界には土壌汚染の問題はつきものです。うちの会社では徹底して環境対策をしていたので問題は起こらないだろうと思っていたのですが、初期の初期の段階から安藤さんより様々な可能性とそれに対する対応策を聞いていたので、お互い共通認識を持って安心して進めることができました。

デューデリジェンス(買収監査)に関して資料を集める作業は本当に大変でした。二度とやりたくないです(笑)。社員に悟られないように日中ではなく、夜中にやったりしました。M&A worksの皆さんと夜食を食べたり、缶コーヒーを飲んだり。いろいろなたわいもない話をしたのも、今となってはいい思い出です。

ここで感じたのが、監査の資料を集めるのにも、プロの仕事がある、ということです。相手から求められている資料や数値などに対して的確に判断をし、驚くほどスムーズに、また、相手の求めていることも完璧に理解をして導いてくれました。

価値観合う新代表 協力関係続ける

M&Aを進めているときには、後ろめたい気持ちがありました。誰にも話せず、こそこそと進めている感じは自分の性には合わないなあというものです。この気持ち自体は、秘密保持の観点から仕方ないものだと教えてもらってはいたものの、従業員のことを思うと胸に来るものがありました。

M&Aが成約し、開示できるタイミングになり、従業員には全体に、グループごとに、個別にと時間を作って話をしました。間違った対応や話し方をしなかったこともあり、混乱はなく、誰も辞めることはありませんでした。

取引先も失ったところはありません。反応はさまざまでしたが、「おめでとうございます」と言ってくれる経営者の方もいらっしゃいました。

私自身の変化というと、まずは精神的に解放されました。会社の代表は4月に私から交代しましたが、素晴らしい方を新しい代表に迎えることができました。価値観が似ていますし、すごく仲良くしてもらっています。いろいろなことに対してこちらの話を聞いてくれます。向こうから言われることにも筋が通っているので、僕も協力したくなりますね。交代のあいさつのときに従業員から花束をプレゼントしてもらいました。柄じゃないのですが、本当に嬉しかったです。

M&Aの成功は、何年か経ってしか分からないと聞いていましたが、私としては、このご縁をいただけたのは本当に良かったと思っています。

担当者コンサルタント 安藤から一言

この度はご成約おめでとうございます。冨士鍍金工業所様のご縁をお繋ぎできたことを誇りに思っています。いま思えば、不思議な縁を感じざるを得ないなと思います。仕事に対する価値観や人生観、様々なことで同じ方向性を向いていると勝手ながら感じており、馬場様とは一生付き合っていく関係に発展していくだろうと最初から思っていました。M&Aに限らず、今後も様々なご縁を頂戴できれば幸いでございます。冨士鍍金工業所様ならびに馬場様、関わられる皆様の益々のご発展をお祈りしております。

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