一代で築き上げた会社を譲渡するということ

一代で築き上げた会社を譲渡するということ

譲渡企業:株式会社オレンジ・コミュニケーションズ
設立年月日:1986年
事業内容:PR、広告の企画・制作、編集、イベント企画等
成約時の御年齢:65歳

譲受企業:株式会社エイエヌオフセット
設立年月日:1993年
事業内容:広告・印刷物の企画制作、印刷、製本加工等

フリーのデザイナーとして活動後、1986年に有限会社ビットデザイン(現、株式会社オレンジ・コミュニケーションズ)を創業した山池滉氏。アナログな時代から急速にデジタル社会へとシフトが進んだ激動の時代を乗り越え、更に次の時代へと会社を繋ぐために、M&Aという決断をしました。

一代で築き上げた会社を譲渡するに至った背景や、心境はどのようなものだったのか。山池氏ご本人に伺いました。

1. クリエイティブな仕事への自負 デザイナーの地位向上に貢献

山池氏:21歳からフリーのデザイナーとして活動を始めて44年、振り返れば本当に色々なことがありました。

当時デザイナーは決して待遇が良いとは言えず、締め切り等に追われ、常に長時間労働を強いられる状況でありながらそれに見合った報酬を受け取る事は出来ませんでした。
自分自身、この職業は広告媒体を通して企業の業績に大きく関わる仕事だという自負があり、次世代の有能なデザイナーやクリエイター達にとって、クライアントとしっかり交渉が出来る魅力的な業界にしなければならないという大それた思いを込めて1986年に(有)ビットデザインを設立しました。

会社設立後、お客様からご評価をいただき、技術の向上とともに、いい条件で仕事を受けることができるようになりました。会社の業績を伸ばすだけでなく、自社ビルを購入したり、デザイン学校を運営したりと、精力的にデザイナー業界の地位向上に努めてきたと思っています。

当時のデザインは、まさに鉛筆で線を一本ずつ繋ぎながら、丁寧にデザインするものでしたが、その後、デジタル化の波がやってきました。私はアナログ人間でしたが、マッキントッシュを一早く導入し、着実にデジタル化に対応し、さらにお客様からデザインや広告物の企画・制作だけでなく、PR全般の支援をしてほしいという依頼をいただけるようになりました。

私は信頼できるスタッフに仕事を任せることができるようになったため、徐々に経営の最前線からは退いていました。

2. 「自身の体調」と「知り合いのM&A」が転機に

そんな中2つの転機がありました。

一つは、年齢的にも体のいたるところにガタがきて、最前線でエネルギッシュに仕事に向き合うことができなくなってきたことです。

デザイン学校の運営時もデザイナーとして有能な人材をつくりたいという思いで設立しました。成長した若いスタッフの作品を見ると、今までにない新しいデザインだなと感じることもあり、自分は徐々に退いたほうがみんなのためになるのではないか、と感じるようになりました。

もう一つは、最近、知人がM&Aで会社を譲渡したことです。M&A自体あまり身近には感じていませんでした。また、自分がゼロから築いてきた会社を誰かに譲るということに抵抗も感じていました。

しかしながら、自分の年齢や体調等を考え、M&Aという選択肢もあるなという思いになりました。M&Aは決してネガティブなものだけではない、という思いと、そして良いM&Aにするためにはいいパートナーが必要だ、という思いを持ちました。

3. M&Aコンサルタントとの出会い

そこから上場しているM&A仲介会社のコンサルタントや、少数精鋭でやっているM&A仲介会社のコンサルタントなど、何人もの方とお話をしました。私も40年以上経営をしてきたので、少し話をすればその人が信頼できるかどうか分かります。

他のM&A仲介会社の方が自分の数字のために話をしているのが透けて見えた一方で、M&A worksの方はM&Aを通じて何をしたいのか、親身になって話をしてくれて、この人であれば、最後までしっかり支援してくれるだろうと強く感じました。

実際に、最後まで丁寧に支援をしていただきました。

買収監査のための自社の資料集めは本当に大変ではありましたが、全ての段取りをスムーズに準備をしてくれました。先手先手でアドバイスをもらえたために、ほとんどストレスを感じることはありませんでした。

「次にこれが必要なので、準備しておきますね」
「これを事前に取り掛かりたいんですけど、この情報だけもらえませんか?」

こんなコミュニケーションが多く、

私が「これってどうなんだっけ?」と質問をすることがあっても

「〇〇なので、大丈夫です。安心してください」

と、ありとあらゆる場面で、答えをしっかり準備をしている姿にプロとしての姿勢を強く感じました。

4. 素晴らしい縁と支援に感謝

いくつかの候補先様と協議をさせていただきましたが、最終的に譲り受けていただいたエイエヌオフセット様とM&Aができて、本当に良かったと思っています。

  •  東京に本社を構える会社様でありながら、名古屋に拠点をお持ちであったこと
  • オレンジ・コミュニケーションズと業務上の関連性も強いことから、双方に多くのシナジーをもたらすであろうこと
  • エイエヌオフセット様の井上社長が本当に素晴らしいお人柄で、従業員もこのM&Aを前向きに捉えることができるであろうと想像ができたこと

こうしたことがお相手様の決め手になりました。

オレンジ・コミュニケーションズという会社は自分がゼロから築いてきた会社です。そんな会社を誰かに譲ることに抵抗はありました。

しかしながら自分の会社を、納得できる金額で譲り渡すことができる会社があること、それがこのような素晴らしい会社であることが非常に光栄なことだと思い直しました。

よく会社を譲渡することは、娘を嫁がせることと重ねられると言いますが、心から応援できる嫁ぎ先だと思っています。

私自身、非常に驚いたエピソードがあります。

M&Aが成立した後に、井上社長に弊社の従業員の前でご挨拶をしていただきました。ご挨拶をいただく少し前に私から概要は伝えていたものの、ご挨拶をいただいたその数分後に、

「この仕事を一緒にできないか」
「是非このクライアントへ一緒にご挨拶に行きましょう」

このような会話がすぐに繰り広げられていました。

従業員がこのM&Aを前向きに捉え、すぐさま次のビジネスのための協議をしている姿を見て、あらためて頼もしく感じるとともに、エイエヌオフセット様とご縁をいただいて良かったと強く感じました。

最後に、このように素晴らしい会社様とM&Aが成立したのは、M&A worksの支援があったからだと思います。M&A worksがオレンジ・コミュニケーションズという会社のことを誰よりも深く理解してくれ、しっかり提案をしてくれたからこそ、このM&Aが素晴らしいものになったと感じています。

担当コンサルタント 太田から一言

この度はご成約おめでとうございます。山池様は仕事に対しても、ご趣味に対しても、あらゆることに対して真剣である方だと感じていました。私も、オレンジ・コミュニケーションズ様にとって、山池様にとって、何が最善かを真剣に向き合わせていただきました。結果的に本当に素晴らしいご縁をお繋ぎすることができて、光栄に思っております。
今後とも、M&Aに限ることなく、様々な形で関係を継続させていただければ幸いでございます。

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