(写真は左からM&Aworks奥村、宮田氏)
譲渡企業:宮田エンジニアリング株式会社 設立年月日:1973年 事業内容:自動計量機の設計、製作、販売、メンテナンス M&A成約時の御年齢:62歳 | 譲受企業:株式会社長島エンジニアリング 設立年月日:1973年 事業内容:機械設計・製図関連請負、技術者派遣 |
父の代から続く自動計量機メーカー・宮田エンジニアリングの2代目だった宮田芳則氏。オーダーメイドで粉粒体の自動計量機を受注、設計製作し、メンテナンスまで請け負うという、大手にはできないスタイルで顧客に選ばれてきました。
ただ、長年の課題は人材の確保でした。若手を採用してもなかなか定着せず、従業員の高齢化が進んでいきました。廃業してしまえば、お客様及び従業員に迷惑がかかるという強い責任感のもと、M&Aを決断しました。その決断の前には3年程度悩み、仲介会社の選定にも2年ほどかけていました。
その後、設計の人材派遣も行う長島エンジニアリングと2023年にM&Aを成約し、宮田エンジニアリングには新たな社員が入ることが決まりました。M&Aを選択するに至った詳しい経緯や、ご自身の今後について宮田氏にお話を伺いました。
若い人ほど定着しなかった
宮田氏:私たちが請け負う機械及び設備はすべてオーダーメイドで、納入後の定期メンテナンスまで一貫してやります。お客様に期待されて仕事を請け負っている自負があり、仕事に関しての不安はありませんでした。ただ、『人材の確保』が、やはり私の1番のテーマでした。
最初はハローワークを通して採用もしていましたが、新しく入った社員が長続きしませんでした。特に若い方を希望すればするほど、入社してもすぐ辞めてしまいました。なぜ辞めるのかを聞ける範囲で聞き出してみると、入ってくる方が持たれているイメージと、実際の働き方にギャップがあることが分かりました。
私たちの会社は東京23区内にあります。応募してくる方は、“東京の会社”というイメージを持たれています。ただ、業務としては社内業務というよりも、お客様への対応を含めて出張の割合がどうしても多くなります。出張も関東近辺だけではなく全国、さらには海外もあり、週末もその滞在先で過ごす場合も出てくる。こうしたサイクルに嫌気がさしているというものでした。
もちろん、私たちの仕事内容を根本から変えることができません。その後採用にお金をかけてみましたが、望む人材は思うように確保できませんでした。このままいけば、私も含めて社員は年を取るばかり。引き継ぐ人がいなければ、仕事ができなくなってしまいます。オーダーメイドで仕事をいただいているのに、私たちが急に『会社をたたみます』と言えば、お客様も困ってしまう。それだけはやっぱり防がないといけませんでした。
「M&A」という言葉が一般の人の耳にも入るようになってきて、私にとっては助かるというか、どこか良い雰囲気に聞こえました。タイミング的にも(M&Aを)考えてみたいと思い始めました。
大手M&A仲介会社の“マニュアル”に戸惑った
最初は大手M&A仲介会社の担当者と面談しました。私は、素人ながらに書籍を読むなどして、M&Aがどういうものかを頭に入れてから話を聞きました。ただ、相手のペースに乗せられてしまうような気がして、ちょっと怖かったんですよね。私たちの資料やデータをお渡しした後、立派な分析結果のレポートが出てきて。「(企業の)価値はこうです」と担当者が出してきたのですが、私は『こんなに事務的でいいのかな』という感覚がありました。
他も聞いてみないと、という思いで別の大手M&A仲介会社の担当者にも会いました。そのうち1社とはアドバイザリー契約書の契約寸前まで進んでいました。その最中、顧問税理士から紹介を受けたのが、M&A worksでした。大手ではない仲介会社の話を聞くことにも興味があったので、会ってみることにしました。
大手には大手なりの良いところがありますし、マニュアル化した流れに乗りたいのであれば大手にすればいいと思います。ですが、やはり私は、(M&A worksには)型にはまらない良さがあると感じました。今振り返れば、私には通常業務において大きな会社には負けたくないという反骨精神があるんですね。M&A worksにも同じ精神があったように感じます。そして、その気持ちから出る様々な工夫や、プロとしての視点。これは、自分の今までやってきた会社経営と通ずるものがあり、創業から若い会社であるけれどもこのM&A仲介会社とともに進めていきたい気持ちになりました
『プロ』の視点に可能性の広がりを感じた
私たちの会社とM&Aをする相手には、今の事業を当然引き続きやっていただきたい。そのため、私のイメージの中には、業界で近い会社の方と一緒になるのがベストだという思いがありました。例えば、私たちに注文して機械を買っている会社であれば、私たちとM&Aをすれば設計から製作、メンテナンスまで自社でできるわけですね。業界でのうちの立ち位置だってご存じでありますし。
でも、M&A worksの担当者と話していく中で、人材派遣ができる会社というキーワードが出てきました。私は当初、イメージが全く湧かなかったんです。一般的に人材派遣だけを行っている会社だとしたら、『うちの事業との関連性は…』と若干の抵抗感がありました。ところが、よくよく聞いてみると、人材派遣の会社の中には、設計を専門に請け負われていて、設計ができるエンジニアをメーカーに派遣できる会社があるということでした。
このとき感じたことは、『プロの見方は違う』ということでした。私は一つの狭い世界で生きてきて、業界としても狭い中でやってきましたが、M&Aを専門にやっている方は広い視野で見ていらっしゃる。私たちの会社のM&Aにはいろいろな可能性があると考えを改めることができました。
長島エンジニアリングの長島社長と初めてお会いした時、お顔を見ただけで、すごくホッとしました。
私の場合は少人数でやっている会社なので、社長が技術的な部分も含めて全部理解していないといけません。一方、長島エンジニアリングは自社でメーカーをやっているわけではなく、設計において非常に優秀な人材をお客様に派遣して仕事を請け負っていらっしゃいます。こうした業界や経営に違いがあったとしても、長島社長のお人柄に接し、業務を融和できると感じました。
採用時の困りごとが、魅力の一つに変わった
もともと課題としてあった人材確保については、これから具体的になっていくと思いますが、私たちの会社にまずは一人入社していただくことができました。設計業務に従事していただく予定です。さらに、私たちがグループ会社になったということで、長島エンジニアリングさんの中で興味があるという方が複数お見えになり、私たちの社内見学会も開くことになりました。
長島エンジニアリングさんからみれば、メーカーとして製造部門を持って、責任を持って世の中にモノを送り出すことができるグループ企業が出来たのです。そういう仕事をしてみたいという従業員の刺激にもなっているんですね。
長島エンジニアリングさんは群馬県に本社がありますので、東京23区内に新たな拠点ができたということも大きいようです。つまり、東京を拠点にしながらあちこちに出張したいという従業員がいらっしゃるということです。私からしたら、以前の採用時に困っていたギャップが、魅力の一つに変わっていることに驚いています。
余談になりますが、他のM&A仲介会社では提案していただけないような、私の生き甲斐をサポートする提案もM&A worksから受けました。ぜひとも、皆さんも話を聞いてみるのは面白いと思います。
担当コンサルタント 奥村から一言
私は社長の人生に徹底的に向き合いました。なぜM&Aを検討したのか、どういう経緯で社長になったのか、従業員との関係性や社長の趣味、家族構成も含めて深く伺いました。丁寧に分析させていただくことについてもしっかりとご案内し、納得いくまで些細なことも質問していただくように努めました。宮田エンジニアリング様がお客様に合わせてオーダーメイドをしているように、私も宮田氏の人生に合わせて、M&Aをカスタマイズさせていただきました。