譲渡企業:株式会社みらいオフィス 設立年月日:2005年 事業内容:インターネットを利用した各種情報提供サービス、コンテンツ企画・制作 | 譲受企業:A社 事業内容:収益不動産を核とした資産形成コンサルティングなど |
大手オフィス賃貸仲介サイトなどの不動産テック事業を展開していた杉浦克海氏は2019年、A社に売却しました。その当時、M&Aアドバイザーとして杉浦氏をサポートしたのが、まだ大手M&A仲介会社に在籍していた安藤でした。その後、安藤はM&Aworksを立ち上げて独立。杉浦氏は個人投資家として安藤を支援しています。杉浦氏に当時M&Aに至った思いを伺った。
事業拡大には大手と組みたかった
杉浦氏:約20年会社を経営し、地道にやってきた成果で徐々に伸びていることは実感していましたが、一気にスケール(拡大)させるには、大手企業の力が必要だと思っていました。営業の人数も含めてリソースが足らず、人材の採用・育成にももっと力を入れたかった。それが売却を考えた理由です。もともとM&Aは知っていましたし、そういう経営判断もあるだろうと思っていましたから。
(M&A仲介会社の)4社ほどの担当者と会いました。ある会社はしゃくし定規に『利益がどれぐらい出ているのか』『(財務資料から)御社の価値はいくらですね』と私の事業を理解しないまま、売上と利益だけを見て査定している感じ。ただ数字だけ並べられても、売る気にはなれませんし、提示された数字であれば自分で回収できる自信はありました。『もうちょっと私のこだわっているものとか聞いてくれたらいいのに』と率直に思いましたね。
一方、安藤さんは『(私が)何をしたいのか』『どういうノウハウがあるのか』など私自身や会社、事業のことを丁寧に聞いてくれました。私たちは賃貸料など不動産に関するデータベースを豊富に持っていました。『M&Aをしたら、こういうストーリーが描けるんじゃないか』とイメージを膨らませて将来像を話すが本当に面白かったですね。自分の会社の将来と、個人の将来と、でも、きれいなことばかりではなくて、いろいろなことを話して、気が付いたら3時間とか経っていました(笑)。これがM&Aなんだと思います。
自社の強みも弱みも包み隠さず議論した
安藤さんとは当初、週2回ほどのペースで会っていたと思います。M&Aを進めるにあたって自社の強みだけではなく、弱みも含めた上でしっかり話しました。弱みは隠したほうがいいと思いがちですが、それを補完するのがM&Aだからちゃんと言いましょうと指摘されたのは、目からうろこでした。将来、相手と組んだ後にマイナスになっても嫌ですから。
最初に(お相手の)社長と会った時には、『こういうところを協力してほしい』『逆にこういうことは自分たちはできる』『これからこんなことをやっていきたい』とお伝えしました。すると、お相手からも前向きな話が聞かれ、会話が盛り上がりました。私たちの強みと弱み、先方の強みと弱みが完全に合致していました。これは事前に安藤さんと何度も議論を重ねていた通りでした。
うちの成長戦略が見込めなかったら、売却するつもりはありませんでした。ですが、社長と話すうちに、もう少し大きい夢を見られるようになっていましたし、成長戦略のイメージもさらに湧きました。
大事なことは『因数分解』すること
自社の将来像を話すことは、もちろん自社の役員や社員とも行います。ただし、彼らは身内です。自己都合で語ってしまうこともあれば、意地を張ってしまうこともあります。
ですので、ある意味、“第三者”である経営のプロフェッショナルと話すことは、自分のやりたいことをあらためて考える時間として非常に有意義でした。安藤さんには『まずは御社を因数分解してみましょう』ということが印象に残っています。M&Aの事例や業界の動向、比較も交えながら話を進めてもらえたのも良かったですね。
仮にM&Aが成就しなかったとしても、経営者が壁打ちして考えを整理するために、プロに相談することはプラスになると思います。
安藤さんを魅力に感じて、まさか今M&Aworksさんの仕事をお手伝いしているとは思いませんでしたけどね(笑)
安藤から一言
杉浦社長とのM&Aを通じて一番感じたことは、M&A仲介という仕事が本当に面白い仕事だなということです。稚拙な表現ではありますが、いろいろなお話をお伺いして、一緒に夢に向かって進んでいく。出てくる人たちは本当に真剣な方ばかりで、様々な知恵を出して、喧々諤々と議論を重ね、一つのゴールに向かって、一緒に進んでいく。私として、杉浦社長の夢、将来、これらを隣にいながら実現できたことは一人のM&A仲介者冥利に尽きるなと心より思います。