後継者不在はM&Aで解決できる? 相手企業の見つけ方やポイントを紹介

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執筆者 五月女 圭介

米国大学院卒業後、ITベンチャー企業及び大手事業会社にて、経営戦略や新規事業開発等に従事。M&A後の業務統合に深く関わり、譲渡企業の経営者とともに成長戦略立案や事業立て直しに携わる。企業成長におけるM&A活用の重要性を強く実感し、M&A 業界への挑戦を決意。 理念ファーストのM&A works代表の安藤に強く共感し参画。

後継者不在はM&Aで解決できる!相手企業の見つけ方やポイントを紹介

後継者不在の問題を抱えている中小企業の経営者は少なくありません。近年、その解決策として注目されているのがM&Aですが、「後継者不在の自社を欲しがる企業はいるのだろうか」と考える経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、後継者不在の解決策としてM&Aは有効なのかを説明し、実施するメリットやポイントを併せて紹介していきます。後継者問題でお困りの経営者はぜひ参考にしてください。

1. 中小企業における後継者不在の現状

帝国データバンクの『全国「後継者不在率」動向調査(2024年)』によると、中小企業のうち約52.1%が後継者不在の状況だという数値でした。

業種別にみると、最も不在率が高かったのは自動車ディーラーなど「自動車・自転車小売」の 64.9%でした。続いて、住宅建築などの「職別工事業」(63.0%)、病院・診療所(クリニック)など「医療業」(61.8%)だったということです。

参考:帝国データバンク│全国企業「後継者不在率」動向調査(2024年)

また、帝国データバンクの「全国「社長年齢」分析調査(2024年)」によると、2024年時点の社長の平均年齢は60.7歳でした。前年を0.2歳上回る結果だといい、平均年齢は34年連続で上昇しているとのことです。社長が「50歳以上」である企業の割合は8割を超えるなど、社長の高齢化に伴うリスクが高まるなかで、事業承継の実施に向けた周到な準備が求められる、と述べています。

参考:帝国データバンク│全国「社長年齢」分析調査(2024年)

2. 後継者不在でもM&Aは実施できる

M&Aを実施すれば、後継者不在問題の解決の糸口となり得るでしょう。M&Aとは企業の合併や買収のことであり、多くの中小企業がこの方法で後継者問題を解決しています。

2-1. M&Aとは複数の企業の合併・買収のこと

M&Aとは、Merger(合併)とAcquisition(買収)の略称で、複数の企業同士が合併することや、ある企業が他社を買収することを指します。

具体的なスキームとしては、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割などが挙げられます。それぞれの意味は以下の通りです。

スキーム意味
株式譲渡譲渡企業の株式を譲受企業に売却する方法
事業譲渡譲渡企業の事業の一部もしくはすべてを切り離し、他の会社に承継させる方法
合併複数の企業が1つにまとまる方法
会社分割譲渡企業の事業の一部もしくはすべてを切り離して譲受企業に売却する方法

譲渡企業にとって、M&Aを実施する主な目的は事業の継続ですが、譲受企業にとっても、事業規模の拡大や新規事業への進出などさまざまなメリットがあります。

近年では、企業の成長戦略の一環としてM&Aが活用されることが多いため、事業の関連性や将来性を適切にアピールすることで、M&Aを円滑に進められる例も増えています。

2-2. M&Aで後継者不在を解決する企業は増えている

近年、後継者不在の解決策としてM&Aを実施する企業は増えています。

かつては、M&Aに対して「乗っ取り」や「第三者に事業承継させることは恥ずべきことだ」といったマイナスイメージがあり、M&Aを実施する企業が少ない傾向にありました。

しかし、政府がM&Aに対する意識変革や制度の見直しなどを実施したことにより、事業承継の選択肢としてM&Aが浸透し、近年では後継者不在の解決策としてM&Aを実施しやすくなっています。

高齢化や人口減少が進むなか、後継者不在の解決策としてのM&Aは今後も増えるといえるでしょう。

3. M&Aによって後継者不在を解決する2つのメリット

ここからは、M&Aによって後継者不在を解決するメリットを2つご紹介します。

3-1. 会社が存続し従業員の雇用が継続する

後継者不在により自社を廃業させると、従業員は職を失います。しかし、M&Aにより自社を存続させれば、従業員の雇用を継続させることが可能です。

さまざまな業界において人材不足が深刻化する昨今、譲受企業は人材を含めた経営資源の獲得を目的として買収することもあります。
M&Aにより自社を売却することで、自社の従業員の雇用が守られることは、譲渡企業の経営者にとって大きなメリットといえるでしょう。

3-2. 経営者は売却益をもらえる

M&Aにより自社を売却すれば、経営者は売却益を得られます。自社が持つ独自のノウハウやブランド力などがあれば、多額の売却益を受け取れる可能性もあるでしょう。

中小企業の場合、経営者が全株式を保有しているケースが多く、その場合は株主の合意を得る必要もありません(ただし、少数株主が存在する場合には株主の同意が必要になります)。譲受企業と話し合いを行い、双方納得した金額で自社を譲ることが可能です。得た売却益は、引退後の資金や、新たな事業の資金などに役立てることもできます。

4. 後継者不在解決のM&Aを成功させるための4つのポイント

後継者不在解決のM&Aを成功させるための4つのポイント

M&Aを成功させるためには、以下のポイントを押さえておくことが大切です。

・後継者の役割がイメージできるように準備の時間をかける
・自社の強みや弱みなどを明確に把握しておく
・業績が安定しているタイミングで売却する
・M&Aの専門家に相談する

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

4-1. 後継者の役割がイメージできるように準備の時間をかける

後継者不在を解決するためにM&Aを実施する企業は増えているため、他社に差をつけてよい条件で話をまとめるには工夫が必要です。

譲受企業にとって、「事業を受け継いだあと、具体的にどのような役割を果たせばよいのか」をイメージすることは容易ではありません。そのため、後継者がいない企業のM&Aをためらう企業もあるのです。

後継者がいなくても魅力的な企業だと感じさせるためには、譲渡企業の経営者が事前に準備しておくことが重要です。

具体的には、経営者が日頃から行っている仕事内容や意思決定の流れ、判断基準、組織のルールなどを整理し、文書化しておくとよいでしょう。こうした詳細な情報を譲受企業に提示することで、後継者として会社を譲り受けることのハードルが下がる可能性があります。

ただし、引継ぎの準備をM&Aの実施が決定してから数日で実施するのは現実的ではありません。M&Aの検討段階から、後継者不在の課題解決に向けて着実な準備を進めていくことが不可欠です。

4-2. 自社の強みや弱みなどを明確に把握しておく

M&Aを成功させるためには、自社の強みや弱みなどを明確に把握しておくことが重要です。他社にはない独自の魅力的な商品やサービスは何かを具体的に洗い出し、譲受企業に伝えられるよう資料にまとめておく必要があります。

特に遠隔地の企業とM&Aを行う場合、初回の案件提示時に自社の魅力を存分にアピールできる資料があれば、有利に交渉を進める材料になります。

逆に、自社の弱みについても把握し、適切に伝えるのが効果的です。譲受企業は、M&Aのメリットだけでなくデメリットも気になっているものです。M&Aによって補えるとよいポイントも伝えることで、相手企業との信頼関係が生まれるでしょう。

自社の強みや弱みを詳細に分析し、客観的な評価を行うことが、M&Aの成功に向けた重要な第一歩です。自社の強みはしっかりとアピールし、M&Aによって補える弱みも伝えることで、取引を円滑に進められるでしょう。

4-3. 業績が安定しているタイミングで売却する

M&Aを有利に進めるには、売却するタイミングで自社の業績が安定していることが重要です。自社の業績が順調で将来性が高いと譲受企業に判断されれば、有利な条件でのM&Aが期待できるでしょう。

一方で、業績が低迷している状況でM&Aを実施すれば、譲受企業から魅力的な存在とは見なされません。その結果、適切な評価を得られないだけでなく、譲受企業を見つけることさえ難しくなります。

自社の業績が安定しているタイミングを見極めて売却するためにも、M&Aの準備は早めに進めておくことが重要です。

4-4. M&Aの専門家に相談する

ほとんどの中小企業経営者にとって、M&Aは初めての経験です。そのため、的確な知識とアドバイスを得るために、M&Aに精通した専門家に相談することをおすすめします。

M&Aの専門家に相談することで、会社の適正な評価額の算定や具体的なM&Aの進め方など幅広い支援を受けられます。契約書や法的な手続きについては、必要に応じて弁護士などの専門家の助言を得ることが望ましいでしょう。自社の今後を大きく左右するM&Aにおいて、経験豊富な専門家の力を借りることは、経営者自身にとっても大きな安心材料といえます。

5. M&Aにおける相手企業の見つけ方

「後継者不在問題の解決のためにM&Aを実施したいけれど、どのように相手企業を見つければよいのか」と悩む経営者は多いものです。ここでは、M&Aにおける相手企業の見つけ方について解説します。

5-1. 金融機関や税理士などの取引先に相談する

普段から取引している金融機関や税理士などに相談することで、相手企業を見つけられる可能性があります。特に長年の付き合いがあれば、自社の実態を把握していることが多いため、適切な企業を見つけやすいというメリットがあります。

また、税理士であれば複数の企業と取引していることが多いため、その人脈を活かして相手企業を紹介してくれるかもしれません。金融機関の場合は、各地域に展開する事業所を経由して、さまざまな業界の相手企業を紹介してくれる可能性があります。

5-2. M&Aのマッチングサイトを利用する

近年では、インターネット上で相手企業を見つけるM&Aのマッチングサイトが増えています。譲渡企業・譲受企業の双方が登録し、事業内容や業績、売却条件などを公開して相手企業とマッチングする仕組みです。

マッチングサイトには、地方の中小企業から大手企業までさまざまな規模の会社が参加しています。全国各地の多くの企業とマッチングできるため、これまでになかった機会が生まれるかもしれません。

5-3. M&A仲介会社に依頼する

M&A仲介会社は、相手企業の選定からM&Aの実施まで、M&A全体をサポートする専門会社です。M&Aの実施を円滑かつ効率的に進めたい場合、M&A仲介会社に依頼するのがより確実な方法といえます。

適切なM&A仲介会社を選定できれば、手続きの負担が大幅に軽減され、双方が納得のいくM&Aを実現できるでしょう。M&A仲介会社を活用する際は、得意分野や過去の実績を慎重に見極めて依頼することが重要です。

6. まとめ

近年、後継者不在の解決策としてM&Aを実施する企業は増加しています。M&Aを実施すれば、従業員の雇用を継続できたり、売却益を受け取れたりなどのメリットがありますが、必ずしも成功するとは限りません。

後継者獲得のためのM&Aを成功させるには、事業を譲り受ける企業が安心して買収できるよう準備することが重要です。

しかし、準備や複雑なM&Aプロセスを自社だけで実行するのは難しいでしょう。そのため、検討段階から実施までをサポートするM&A仲介会社に相談することをおすすめします。

弊社では後継者不在の課題を解決し、さらなる事業成長を実現するために、お客様に合った後継者の発掘に尽力いたします。後継者不在を解決したい経営者の方は、ぜひご相談ください。

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