イチから分かる 事業承継とは? 代表的な5つの手法と今からできる準備を解説

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執筆者 石神大揮

2015年より愛知県でヘルスケア事業を経営。順調に拡大していたが、単体での成長に限界を感じ、譲渡側としてM&Aを実施。譲渡後は大手企業で、50人以上のマネジメントや譲受側としてM&Aを経験。大病を機に人生観が大きく変わり、「深く人の人生に関わる仕事をしたい」と一念発起。M&Aworksの創業に参画。

イチから分かる 事業承継とは? 代表的な5つの手法と今からできる準備を解説

事業承継をしようと思っても、簡単にできるものではない —。

こう思われている中小企業のオーナーはいらっしゃいませんか?

事業承継とは、企業(個人事業主であれば個人の事業)を後継者に引き継ぐことを意味します。事業承継を行うには、さまざまなことを整理し、生じた問題を解決する必要があります。

帝国データバンクの調査(2022年)によると、全国の休廃業・解散件数は5万3426件となり、休廃業する直前期の決算で当期純損益が「黒字」だった割合は54.3%を占めました。

これは、M&Aによって事業承継ができるということを知らない経営者の方がたくさんいるということかと思います。M&Aにおける事業承継は今では一般的になりつつある一方、事業承継の詳細についてご存じのない経営者の方がまだ多くいらっしゃると思います。

この記事では、M&Aに限らず、事業承継についての基礎的な説明から始まり、どのような準備をしていくことでスムーズに事業承継が実現できるかなどを具体的な事例を交えて説明したいと思います。

事業承継は、情報や準備の有無で結果が大きく変わってくるため、今すぐに事業承継をするつもりはないというお考えの方も、この記事をお読みいただければ、皆様の会社経営における参考にしていただけると思います。

目次

1. 事業承継には2つの承継がある! ―財産承継と経営承継―

事業承継には、2つの承継があることをご存じでしょうか。

それは、

  • 財産承継
  • 経営承継

です。

この違いを理解することで、事業承継に対する準備や具体的な対応方法をイメージしやすくなると思います。それぞれを分けて考える必要がある場合もありますので、ご一読ください。

財産承継とは、その名の通り、企業を財産として見て承継をすることです。つまり、それは『企業の株式を承継する』という意味です。

経営承継とは、その名の通り、企業の経営を承継することです。つまり、それは『企業の代表取締役をはじめとした経営権を承継する』という意味です。

事業承継というと一つの意味合いしかないとお考えの方もいらっしゃると思いますが、この2つの意味があるということをご理解いただければ、皆様の会社の実態によって「どちらを」「だれに」承継するのかということが考えられるため、お考えに沿った事業承継が実現できると思います。

具体的な例を想定して話を進めていきます。

(1)現社長の息子が会社の後継者として社内にいる場合
(2)親族内に後継者候補がおらず社内にいる番頭に社長を継いでもらいたい場合

1-1. 現社長の息子が会社の後継者として社内にいる場合

「現社長の息子が会社の後継者として社内にいる場合」は、最もシンプルな事業承継を想像していただけると思います。株式(財産)も経営権も息子に承継するため、息子が社内で経営しやすい状況を整えていくという進め方になります。

1-2. 親族内に後継者候補がおらず社内にいる番頭に社長を継いでもらいたい場合

では、「親族内に後継者候補がおらず社内にいる番頭に社長を継いでもらいたい場合」は、どうでしょうか。

会社の経営は“番頭”に任せるものの、『株式(財産)を買い取ってくれるかどうか』という問題が発生します。会社の業績が良い場合は株式の価格が高額になることが多く、その金額を番頭が用意できるのは稀です。すると、番頭はその金額を用意するために金融機関等から借入をしなければいけません。もしくは、株式の価格を番頭が買い取れる金額まで落とし、低廉で売却をするなど、譲渡オーナーが損をすることになります。

どちらの場合も一定以上のリスクや損害をどちらかが背負うことになるため、断念することが多くなる傾向にあります。その際にM&Aを活用すれば、経営権は番頭に承継し、株式は第三者への承継で両者のリスクとリターンを最大限考慮した事業承継が可能になります。

また、事業承継は、親族に承継(親族内承継)をしても、従業員に承継(従業員承継=MBO)しても、第三者に承継(M&A)しても、結局は『自分以外の誰かに承継をする』ことに変わりはありません。そのため、どのような承継方法であっても、後継者が経営しやすいよう事前の準備が望ましいとされています

それでは、具体的な手法について解説をしていきます。

2. 事業承継の代表的な手法5選

事業承継における代表的な手法は表の通りです。

事業承継における代表的な手法(1)

 

 

2-1. 親族内承継の特徴

  • 後継者となる親族(現経営者の子ども、孫、兄弟、娘婿など)が株式と経営権を取得
  • 親族間で代々引き継がれている場合、社内外からの納得や協力が得られやすい
  • 後継者候補を親族に早くから絞れば、社外で経験を積ませてから自社に戻ってくるなどの育成も可能

日本における承継方法の代表的なものが親族内承継と言えるでしょう。

ただし、親族内に後継者候補がいても、その後継者候補に経営者としての能力や資質が備わっているかは別の問題になります。後継者候補が自社に入った後、経営者に向いていないことに気づくこともあるでしょう。また、親族内承継をあきらめ、M&Aを選択する理由として相当数あるのが「息子はいるけどもこの子に継がせると経営ができないだろう」という不安です。多くの経営者の方が悩まれている課題であるため、それに対する解決策や準備は情報として役に立つものかと思います(詳細は後述)。

2-2. 従業員承継(MBO)の特徴

現社長の想いや業務、会社の文化などを熟知している方に引き継ぐため事業承継を円滑に進められる可能性が高い。

マネジメントバイアウト(Management Buy Out)の頭文字を取り、MBOと言われるものです。これは、マネジメントをしている人、つまり、親族以外の従業員や役員に事業承継することを意味します。

MBOで後を継ぐことになる従業員は資金面のリスクを負う認識を持たなければいけません。株式を買い取るために多額な資金を必要になるからです。一般的に後継者が借入金の個人保証を行うことになるため、後継者自身だけではなくその家族の理解も求められます。

2-3. M&A(第三者承継)

  • 後継者候補を広く外部に求めることができるため、後継者不在を解決することができる
  • 経営者の個人保証は譲受側が個人保証をそのまま引き受ける、もしくは融資を肩代わりする形で解除することができる

親族や従業員に後継者候補がいない、見つからない場合は、M&Aで第三者に経営を託す選択肢があります。

ただし、希望の条件を満たす相手を探し出すことは難しく、見つけたとしても自力で交渉を進めるにはかなりの時間と労力がかかります。経営権が譲受側に移行されるため事前に条件を組み込まないと従業員の雇用環境が激変するなどの影響があることを忘れてはいけません。一般的には、親族内承継ができなければ従業員承継。従業員承継ができなければM&Aという選択をするケースが多いかと思います。

2-4. 上場(IPO)の特徴

  • 一般的にオーナー経営者の保有する株がすべて市場に売り出されるわけではなく、経営権を維持したまま自ら会社を成長させることが可能になる
  • 不特定多数の一般投資家らを対象に株式を売却できるため、多くの利益を得られるケースもあると言える
  • M&Aに比べ、IPOのほうが株式の価値が高くなることが多いため、株主としての金銭的なメリットは非常に大きいものと言える

上場企業という社会的な地位と知名度の向上により外部から優秀な人材が集う可能性が高まり、後継者問題の解消に有効だとされています。

ですが、IPOを実現するには膨大な時間とコストがかかります。なぜなら、上場審査、監査や法的準備など、株式公開に向けて必要となる作業は多岐にわたるからです。さらに、株式が公開されれば経営権が創業者以外にも渡ることになるため、株主が経営に介入するようになり、これまでにない大きなストレスを抱える可能性があります。

2-5. 清算の特徴

清算とは、株主が意思決定を行い、会社の資産や負債を処分し、会社を消滅させる手続きのことを指します。具体的には、売掛金の回収や設備・不動産の売却などを行い、それらで得た資金で負債を返済し、残った資金を株主に分配(配当)します。

ただし、事業を停止することにより、これまで培ってきた実績やノウハウを失ってしまいます。雇っている従業員を解雇し、取引先や顧客との商売上の関係も全て清算することになります。

3. 事業承継の準備はいつから取り組めばいい?

よく『何歳になったら事業承継の問題を考えたり取り組んだりしたらいいか?』という質問や、『5年後ぐらいに承継をしたいから今は特にやることはないよ』という話をいただきます。もちろん状況によって事業承継の準備に対する濃淡は必要です。

しかし、M&Aのプロフェッショナルとしていつも思うことは、事業承継の準備は、今すぐにしたほうがいい、ということです。それは、事業承継の準備は1日や1ヶ月でできるものではなく、時間がかかるからです。

仮に10年後20年後に承継が発生するとしたとしても、今からできる準備はたくさんあり、それによって、スムーズに承継ができるようになります。裏を返せば、今から準備をしておけば、積み重ねられる準備が多くあるため、負担が少なく準備ができるということにつながります。

4. フローチャートとともに 事業承継の進め方は?

まずは、情報収集と現状整理することから始めましょう。
下記のフローチャートに従って、貴社の状況を把握してください。

フローチャートとともに 事業承継の進め方は?

(※清算については、他の4つの承継が実現できなかった最終手段としてお考えください)

では、各承継方法について具体的に説明していきます。冒頭に記載をした財産承継と経営承継という2つの観点から説明をしたいと思います。

4-1-1. 親族内承継 強いお気持ちと能力があるか確かめる

最初に親族内で後継者となる人を選びます。このときにその後継者となる人が「本当に後継者としてふさわしいのか」という疑問が出る、とよく経営者の方からご相談を受けます。ご自身のご子息を後継者とする場合、ご子息に対する愛情や家族としての関係性が眼鏡を曇らせてしまい、正しい判断ができないという方も多くいらっしゃいます。こういった際には、2つの観点で判断をされると良いでしょう。

1つ目は、後継者に会社を継ぐという強いお気持ちがあるかを確かめることです。

これは、私自身が創業経営者として会社を運営していた経験からも分かるのですが、会社経営というのは、どんなことがあっても前に進まなければいけないし、社長として多くの責任を背負わなければいけないです。当然にこういった覚悟は会社経営をすることによって培われるものも多分にあるため、今時点で後継者の方がそういった覚悟があるのか、ということをつきつけるのではなく、会社を継ぎたいという強い想いがあるかどうかを判断基準にされるのが良いのではないでしょうか。

2つ目は、後継者に会社を運営する能力があるかを確かめることです。

これは、非常に難しいとされています。なぜならば、現経営者である社長はある意味で“スーパーマン”と比喩されるほどさまざまな業務に精通し、社長として会社を引っ張ってきただけの実力と実績があります。その“スーパーマン”が後継者を見たときにはどこか物足らなく感じてしまう。これは仕方のないことだと思います。

ここで私が思う大切な判断基準は、何が何でもやりきるという実行力、あきらめの悪さ、粘り強さ、執着、こういったことがあるかないか、ということだと思います。言葉を換えれば、ハングリーであると表現できるかもしれません。

後継者からすると、前の社長と全く同じやり方をしなければいけないということはないと思います。後継者だからこそできる経営があります。そのため、先ほどのハングリーさがあれば、きっと経営者として荒波を超えていくことができるため、目先の業務の上手、下手ではなく、根本的な資質に絞って着眼されることが良いのではないでしょうか。

4-1-2. 財産承継と経営承継を分けて承継方法を見る

これにより、後継者が決まったとしましょう。それでは、財産承継と経営承継に分けて承継方法を見ていきます。

財産承継

財産承継とは、会社の株式を承継することです。そのため、会社の株式の価値がいくらなのか、という計算をすることがとても大切になります。これには国税庁が示す財産評価基本通達にて株式の価値を計算することになります。

そのため、顧問税理士をはじめとした専門家に相談し、その承継方法を決めていくという流れが一般的です。財産承継については、暦年贈与で時間をかけて渡していく方法や、株式の評価を調整するなど専門的な知識が必要です。もし皆様の顧問税理士がそういった知識に長けていないようであれば、一度M&A works にご相談いただければ、さまざまな専門家をご紹介させていただきたいと思います(手数料等は一切いただきません)。

■関連URL:M&Aworks 問い合わせ

経営承継

経営承継とは、会社の経営権を承継することです。これは、承継する内容が多岐にわたっています。そのため、修業をするために準備期間を設けたり、役職を一つ一つ上げていくことで全体の業務を覚えたりなど会社ごとによってできる準備は様々です。ここでご理解をいただきたいのが、周りからの理解と本人の立場です。

コラム① 親族内承継がうまくいかない理由は?

上記の話をご理解いただくために、ある会社の親族内承継における経営承継がうまくいかなかった事例を紹介します。

東海地方にあるサービス業A社は、非常に営業職の強い会社でした。社内の大半が営業社員で活気のある会社です。創業社長のご高齢に伴い後継者候補として息子さんがご入社されました。しかし、長年会社に尽くしてきた役員からすると、息子というだけで社長候補になってしまっている事実に不満を募らせていました。いざ息子が業務に取り組むと、営業会社がゆえにハードワークを強いられ、慣れていない業務がゆえにうまくいかないことが頻発してしまいました。この状況下で息子を快く思っていない役員陣が、息子に対して嫌がらせを重ねるという事態に発展してしまい、最終的には息子が会社を辞めるという結果になってしまいました。

これは、現経営者の後継者のために周りからサポートを受けやすい環境を作るということを怠ったことが原因だと思います。役員や従業員にもそれぞれ「会社に尽くしてきた」という思いはあるでしょう。そういった想いを大切にしながら後継者を支えてほしいというメッセージを伝えるべきであったのかと思います。また、後継者本人の立場として、「自分は次の社長になるということが当然である」というある種の驕りともいえる姿勢を見せていたので、うまくいかなかったのではと、その社長は反省されていらっしゃいました。

親族内承継における経営承継は、周りからの賛同が得やすいと言われている一方で、事例のように社内に敵を作ってしまったり、または逆に後継者をおだてすぎてつけ上がらせないということもリアルな経営承継を見ると大切だと思います。

「息子とは家族がゆえに深い話がしづらい」と感じる経営者はたくさんいらっしゃると思います。しかし、今まで積み重ねて来られたものを次に託すというのが承継なので、恥ずかしがったり何か話しづらいというお気持ちはいったん棚に上げ、一人の経営者として真剣に向き合う機会をたくさん作ってあげることが一番の承継に対する準備になると思います。

4-2-1. 従業員承継 基本的には親族内承継と同様に考える

後継者となる人材の選任については、基本的には親族内承継と同様に考えていただけたらと思います。従業員もしくは役員としては長年、会社に尽くしてきた人材であるため、社長の後継者に対する理解も深く、また、後継者の会社や社長に対する理解もしっかりできていることでしょう。

次に、①の親族内承継と同じように、「財産承継」と「経営承継」の2つの観点から説明をしていきます。

4-2-2. 財産承継と経営承継を分けて見る

まずは理解をしやすい「経営承継」から説明をします。

従業員承継については、この経営承継は他のどの承継方法に比べてもやりやすいと言われています。それは、先ほど記載したことと重複になるのですが、周りの人(他の役職員や取引先など)からの理解が得やすいからです

もちろん、社長になるということは会社のトップになるということなので、今までの業務と責任の重さが大きく変わっていきます。ここで最も重要になるのが意思決定です。経営は選択の連続であり、答えのあるものではありません。経営者として「これが最も良い手段なんだ」と素早く意思決定をすることが求められます。

これを鑑みるに、意思決定の訓練、つまり権限を委譲していくステップを作ること、これが後継者を育てるために必要な考えだと思います。併せ、①の親族内承継でも記載をしましたが、“スーパーマン”である社長に代わって新しい社長になるということですので、いきなり“スーパーマン”になれるとは限りません。任せる立場として不安やむずがゆさがあると思いますが、育てるために後継者の方に「任せる」という度量も一定以上は必要かもしれません。

次に「財産承継」の説明をします。

財産承継は非常にハードルが高く、ここで断念してしまうケースが非常に多いです。財産承継という名前の通り、財産を引き継ぐということは、株式を買い取るということになります

では、この株式を買い取るための資金をどのように用意すればよいのでしょうか? 

財務内容を含め、良い会社であればあるほど、この株式を買い取る金額は高額になります。ここで比較をするのが、もし第三者にご売却をした場合(=M&A)であれば、いくらになるのか? という基準です。財務内容が良い会社であれば、株式の価額が1億円を超えるというのはよくあることです。この1億円をどのように用意するのかを見てみましょう。

ほとんどのケースで役職員である後継者が1億円という現金を持っているということはありません。それは、社長として給与等をお支払いしているご自身が一番ご存じかと思います。そうすると、1億円を銀行借入などで用意をしなくてはいけません。これに尻込みしてしまうことで財産承継が進まないということはご理解いただけるでしょう。

さらに、仮にこの1億円を用意ができたとして、次に出る問題は、自社が抱える負債に対する連帯保証の問題です。今までこういった大きな負債や保証を抱えるという経験をしていなかった後継者からすると、相当な心理的負担になってしまう。これによって、後継者が継ぎたくないと考えてしまうということです。

これを社長の立場から見ると、ある意味、当然のことかもしれません。というのが、社長はいままでこういった責任を負い続けて強いプレッシャーを感じながら経営を続けてきているからです。社長になることというのは、リスクを背負うこととは切り離すことができないと思います。その分、さまざまな金銭に限らないリターンがたくさんあるということも事実でしょう。そのため、後継者にこうしたことをご理解いただくには、丁寧に説明をし、リスクとリターンに対する教育も必要かと思います。

コラム② 後継者の家族の理解は必要?

もう一つハードルがあります。それは、後継者の家族の理解です。後継者ご本人が承継に対する理解をし、前向きに考えてくれた場合であっても、その奥様を代表とするご家族が心配をして反対に回ってしまう、これによって、財産承継がうまくいかなかったケースはたくさんあります。

奥様に話をしなければいいのでは? と考えてしまうこともありますが、やはり家族の支えなしに経営をすることは難しいですし、家族との確執を生んでしまうことは社長としても望むことではないでしょう。しっかりとご理解をいただく準備をすることが良いかと思います(M&Aworksにはこういった問題を乗り切って承継を成功された事例がたくさんありますので、ご関心がある方はぜひともお問い合わせください)。

では、実際に従業員承継を成功された方はどのように成功されたのでしょうか? それは、先ほどの借入や保証を乗り越え、ご家族の理解を得たというケースもあります。しかし、筆者が見てきた大半のケースでは、第三者に株式をご売却する(M&A)ときの想定される株式譲渡価額よりも下回った金額で売買を成立させています。これにより、後継者が譲受しやすい状況を整えることができるため、承継が成立しやすいということです。

4-3. M&A まず情報収集からスタート

M&Aによる事業承継は、『【必見】はじめてのM&Aの進め方を10ステップで分かりやすく解説!』に詳しい説明が書いてありますので、本コラムではポイントを簡単に説明します。

■関連URL:【必見】はじめてのM&Aの進め方を10ステップで分かりやすく解説!

M&Aによる事業承継は、情報収集と準備からスタートします。

  • 会社を譲渡したらいくらになるのだろうか
  • どうすれば譲渡しやすい状況がつくれるのか
  • どうやって専門家、M&Aアドバイザーを選ぶべきなのか

さまざまな疑問があるかと思いますが、それを解決するために、情報収集されることをお勧めいたします。流れについては、本コラムでは割愛させていただきます。

4-4. 上場(IPO)2つの観点から考える

IPOは2つの観点から考えてください。1つ目が業績とガバナンスの2つをクリアすること。2つ目が監査法人と証券会社と連携して一緒に進めていくこと。

IPOは経営者の大きな夢の一つと言われています。しかし、実現できる企業は限られており、承継方法の一つとして一般的であるとは言い難いと思います。しかし、挑戦をできる環境にあるのであれば、積極的にIPOを目指していくことが良いと思います。

これは主観ですが、IPOで重要となることは、仲間集めだと思います。CFO(最高財務責任者)やCOO(最高執行責任者)、CTO(最高技術責任者)など各部門における専門的な知識を有した方が経営に参画してくれたというのは、IPOを成功させた多くの経営者の方が共通してお話をされていることです。特に重要となるのが、CFOの存在です。実際にIPOを経験したことのある人や監査法人で上場企業の監査をしていたりIPOの支援をしていた方などがいてくれることによって、IPOが加速度的に現実味を帯びるというのは間々聞く話です。

※困難とされるIPOを目指す方に対して、M&A worksは、情報提供や専門的な知識を有する方をご紹介するということを積極的に行っていますので、是非とも情報交換をさせていただければ幸いです。

4-5. 清算 「最終手段」として考える

清算は①~④が実現しなかった場合の最終手段としてお考え下さい。万が一、ご清算をお考えになった場合にも、もしかしたらM&Aでご売却ができるかもしれません。そういった場合に従業員やお取引先を守ることができます。

5.【手法別】事業承継の事例を知ろう!

5-1. 親族内承継の事例:100年続く飲食店を立て直す決意

この飲食店は西日本のある地域で長年愛され、そのエリアの名物といったらこのお店、というブランドを確立してきました。しかし、情報化の時代の中で企業として脱皮することがかなわず、徐々に業績の悪化を招いていきました。

飲食店の3代目は息子に対して、この飲食店を継いでほしいという気持ちと、このままでは苦労するという親の想いのせめぎ合いがありましたが、息子は自ら立て直すことを決意し、他社での修行を経て、この会社に4代目として戻ってきました。

その際、4代目は父親の飲食店にいつ戻るかという期限を明確に決めていました。そして、その飲食店に足りていない「経営という観点」を税理士や金融機関をはじめとした専門家に細かく教えてもらい、4代目の責任を果たすという形で就任しました。会社を継ぐということは、先代とまったく同じことをすればいいというわけではないケースが多いです。伝統を守る、のれんを守る、ということの大切さはあるものの、その中で自分だからできる経営手法を積極的に見つけていった好事例と言えるのではないでしょうか。

5-2. 従業員承継の事例:引き継いでくれる従業員のために低廉で株式を譲渡

この調剤薬局は東日本で10店舗ほどを展開していました。夫婦で切り盛りしていましたが、夫婦の間に子どもはおらず、親族のつながりもほとんどなく継いでくれる人がいませんでした。ただ、息子のようにかわいがってきた従業員が1人いたため、この夫婦はその従業員に継いでほしいと話をしました。

この調剤薬局はM&Aをすれば株価として8億円以上がつくほどでした。しかし、実際はその半分以下の金額で従業員に譲渡しました。後継者である従業員は地元の銀行から融資を受け、買い取り資金を用意しました。その従業員としては、「財産承継」的に非常に引き継ぎやすい環境が整っていたため、引継ぎ後は経営に専念することができました。

5-3. M&Aの事例:「会社を売ってもいい」と気づき自らの代で譲渡を決意

この金属加工業の3代目は、祖父の代から続く会社を守る使命感を抱きながらも、「これが本当にやりたいことかどうか」と葛藤を抱えながら会社を経営していました。後継ぎに親族をという選択肢も考えておらず、モヤモヤしたまま経営を続けて心の余裕も少なくなり、絶え間なく走り続けることに限界を感じるまでになってしまいました。その解決方法は、弊社代表の安藤がForbes JAPANオフィシャルコラムに寄稿した下記の記事をご参考にしてください。

■関連URL:会社を売ってもいい。経営者のモヤモヤが晴れるまで

6. M&Aによる事業承継の相談先でおすすめはM&A works

とても光栄なことですが、M&Aworksは、事業承継に関する問い合わせを多く頂戴しています。私たちを選んでくださったお客様の主な声を紹介させていただきます。

  • 自社の想いを託せると心から思えた
  • 他のM&A仲介会社は皆同じことを言うのに、M&Aworksさんだけは、ちゃんとうちのことを見てくれていると思いました
  • 焦らされることなく、最初から最後まで私のペースで進めてくれました

M&A worksの主な特徴は以下の通りです。

  • 初回のご相談は完全無料です。弊社のM&Aコンサルタントがお伺いする際の交通費も一切いただきません
  • 後継者問題に悩む方には、自社の譲渡の選択だけではなく、後継者を育てる支援や、後継者を招聘するなどの支援もございます
  • 業界では珍しいチーム制の支援を実施しており、経営者様の課題解決を⽀えます
  • 業種を問わず地⽅のネットワークも充実しており、幅広いお相手様からのマッチングが可能です

また、5章で取り上げた事例は、M&AworksのM&Aコンサルタントがこれまでに関わった内容ばかりです。5章で取り上げた事例以外にも、豊富な事例を紹介することができます。まったく同じとは言えないまでも、似た悩みを持つ経営者の方々がM&Aで課題を解決した事例はたくさんありますので、ぜひ一度ご相談ください。

■関連URL:M&A works お問い合わせ

7. まとめ

今回の記事では、事業承継の方法について説明をさせていただきました。事業承継の代表的な手法は、

  • 親族内承継
  • 従業員承継
  • M&A
  • 上場(IPO)
  • 清算

があると説明しました。

もし、事業承継について準備をし始めたばかりの方でしたら、情報収集をするということ、準備をするということの重要性がご理解いただけたのではないかと思います。

M&A worksには本記事に記載した以上の具体的な事例や解決方法がたくさんございます。ぜひとも情報収集の一環ということでご連絡を頂戴できましたら幸いです。

なお、弊社の社員においては、M&Aが一番正しい承継であると決めている人間は一人もおりません。皆様にとって最も良い承継の方法を一緒になって考えさせていただきたいと思っております。

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