【会社の譲渡をご検討の方へ】M&Aのトップ面談とは?事前準備や注意点をわかりやすくご紹介

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執筆者 石神大揮

2015年より愛知県でヘルスケア事業を経営。順調に拡大していたが、単体での成長に限界を感じ、譲渡側としてM&Aを実施。譲渡後は大手企業で、50人以上のマネジメントや譲受側としてM&Aを経験。大病を機に人生観が大きく変わり、「深く人の人生に関わる仕事をしたい」と一念発起。M&Aworksの創業に参画。

【会社のご譲渡をご検討の方へ】M&Aのトップ面談とは?事前準備や注意点をわかりやすくご紹介

M&Aによるご売却を検討されている譲渡企業の経営者にとって、トップ面談は最も重要なイベントの1つといえます。トップ面談は、双方の経営陣が直接対話し、互いのビジョンや経営方針を理解するための機会です。しかし、どのように準備を進め、何に注意すればよいのか迷う人もいるでしょう。

この記事では、M&Aのトップ面談の概要から、実施するタイミング、適切な場所の選定、必要な事前準備、当日の流れまでをわかりやすくご紹介します。さらに、譲渡企業が注意すべきポイントについても詳しく解説するため、今後M&Aにおけるトップ面談が控えている人も、ぜひ参考にしてください。

1. トップ面談の概要をわかりやすく説明

トップ面談とは、文字通り譲渡企業と譲受企業の経営責任者同士が直接面会し、M&Aの実現に向けた意思疎通を図る機会のことです。経営のトップ同士が面と向かって率直な意見交換を行うことで、人柄がわかり信頼性が高まります。

また、譲渡企業は、決定権をもつ株主と経営者(未上場の企業では、株主=代表取締役になっているケースが多いです)が参加するのが一般的です。株主が複数いる場合は、筆頭株主か過半数の議決権を持つ株主が出席します。一方の譲受企業からは、決定権をもつ経営陣とM&Aの担当責任者が参加するのが一般的です。

このようにトップ面談は、譲渡・譲受企業の経営に深く関与している人が集まります。相手から不安に思われないためにも入念な準備が必要です。

2. トップ面談は双方の経営者の人柄や考え方を確認するのが一つの大きな目的

トップ面談の主要な目的は、相手企業の経営者の人柄や企業文化、事業への姿勢を理解し合うことにあります。そのため、単なる挨拶の場ではなく、譲渡企業と譲受企業の双方が、相手側企業の経営理念や価値観、事業への取り組み方などを掴むことが重要です。

経営者同士が理解を深め、望ましいM&A実現に向けた関係性を構築することがトップ面談の主な目的です。経営者の価値観や経営理念などが合わない企業とM&Aを実施すると、M&Aが失敗に終わる可能性があるため、慎重に臨みましょう。

また、実際のトップ面談の場においては、お土産を持参することも多くあります。例えば本社所在地が離れている企業同士がトップ面談をする場合では、この場を和ませる目的として、地元の銘菓などをご持参され、話の流れを作るなどの配慮をします。

地元の話となると、会社設立の背景や、なぜそこで事業を営んでいらっしゃるか、どのような地域柄なのか、働いている方々の特徴など、トップ面談の本題に入る前のアイスブレイクとして、話に花が咲くこともできます。

このように、双方の人柄や考え方を理解するための準備をしっかりとしておくことが良いでしょう(お土産を必ず持っていく訳ではなく、状況に応じて様々な工夫をします)。

3. トップ面談を実施するタイミング

M&Aのトップ面談は、譲渡企業の決算書などの書類を基に譲受企業が検討を重ね、「前向きに検討を進めたい」と判断した上で実施するのが一般的です。基本的には、意向表明書を提出するあとに実施することが多いです。意向表明書とは、譲受企業が買収する意向を示すために、譲渡企業に提出する書面です。

また、1度のトップ面談で相手側企業の経営者の人柄や企業文化などが把握しきれなかったときは、複数回行うケースもあります。トップ面談により双方の経営者が考え方や人柄を理解し合い、納得できたら、M&A実現に向けた本格的な調整が始まるでしょう。

ここで注意をしていただきたいのが、「とりあえずトップ面談をしましょう」という安易なアドバイスの元にトップ面談を実施してしまうことです。

もちろん、会わなければ分からない、ということは事実かと思います。しかし、ご譲渡をされる上で、自社の一定以上の情報を開示することを求められるトップ面談は、とても重要な交渉局面になります。種々の準備を重ね、ある程度ご両社の理解を基礎としない限り、望まない方向に進んでしまうこともあるため、丁寧に進んでいただきたいと思います。

4. トップ面談を実施する場所

トップ面談の場所は、ご両社の状況に応じて選ぶ必要があります。譲渡企業や譲受企業のオフィスで開催されることもあれば、ホテルの会議室を借りたり、M&Aアドバイザリー会社のオフィスで行うこともあります。

譲渡企業のオフィスで行うメリットとしては、譲受企業の経営者が譲渡企業に実際に足を運ぶことで、譲渡企業の社内の雰囲気や設備環境、従業員の様子なども肌で感じことができるということです。これは、逆に譲受企業のオフィスで行う場合にも言えます。

ここで気を付けなければいけないのが、情報漏洩です。トップ面談となると、それなりの多くの人数で行うこともしばしばあるため、普段と違った雰囲気になります。

例えば、普段はスーツの人が来社することが少ない譲渡企業などにおいては、ビシッと決めた複数人の人が来社することで、「何かいつもと違うことが起きている・・・」と従業員の方が違和感を覚えてしまうケースがあります。こういったことから、思わぬ情報漏洩に繋がることもあるため、細心の注意を払うようにしていただきたいです。

M&Aに関する情報が意図しないタイミングで外部に漏れると、従業員の離職や取引先との関係悪化などのトラブルが発生するリスクが高まるため、機密保持の観点から適切な場所を選ぶ必要があるでしょう。

5. M&Aのトップ面談に向けた事前準備について

M&Aのトップ面談に向けた事前準備について

双方の経営者は、多忙な業務の合間に時間を作ってトップ面談を実施するため、トップ面談の時間は1~2時間程度と限られることが多いです。その時間のなかで相手企業の経営者の考え方や人柄を把握するためには、ある意味で無駄な時間を過ごしてはもったいなく、入念な事前準備をすることが大切です。具体的には、以下の項目を準備しましょう。

  • 相手企業の情報を集める
  • 質問事項をまとめる
  • 自社の情報を整理する
  • トップ面談の日程を調整する

ここでは、トップ面談に向けた事前準備について解説します。

5-1. 相手企業の情報を集める

トップ面談に臨む前に、相手企業について情報収集を行うことが大切です。企業のホームページや企業情報サイトを活用し、業績推移、事業内容、経営陣の体制など、基本的な企業情報を確認しましょう。また、相手企業が大手の場合は、新聞やWebニュースなどの報道記事からも、経営方針や直近の動向を掴めます。

可能な限り多角的に情報を収集し、相手企業の実態や強み、弱みを把握しておくことが、トップ面談を失敗させないための準備といえます。情報が多ければ多いほど、相手企業への理解を深められ、トップ面談でも的確な質問ができるようになるでしょう。

こうした際に役に立つのがM&A仲介を行う専門業者です。相手企業の情報を公開されているものからしっかりと収集してくれるだけでなく、実際に深く聞いてきてくれるため、よりリアルな情報を手に入れることができます。

5-2. 質問事項をまとめる

相手企業の情報収集を行うなかで、M&Aの実施にあたりいくつかの疑問点や確認をしたい点が見えてくるでしょう。しかし、トップ面談の当日に、思いついたままの質問をするのでは内容が薄くなってしまうだけでなく、望んでいないような流れに発展してしまうこともあります。そのため、入念な準備は必須です。また、トップ面談を充実させるためには、少し踏み込んだ質問をしてみるのも良いとされています。
では具体的な質問事項の例を見てみましょう。

〔基礎的な質問例〕

  • 「従業員の数や所在地などの基本的な企業の情報」
  • 「経営者の経営に対する価値観や経営理念など」
  • 「M&Aを検討している理由」
  • 「M&A成約後に想定しているシナジー効果」

〔踏み込んだ質問例〕

  • 従業員の数を聞いた上で、「最近の人材不足の中で採用は難しいと思うのですが、御社(※口語体にて記載しています)ではどのように対応をしていますか??」
  • 経営理念を聞いた上で「従業員の方には、経営理念は浸透していますか??従業員に理念を伝えるのはなかなか時間がかかると思いますし、どのようにされているのか参考にしたいと思いまして」
  • M&Aの戦略を聞いた上で「今までにご検討されたM&Aで、ご検討を断念した先はありますか??具体的な先と言うより、なぜそれを断念されたかを教えていただければ、うちの会社がそれと照らしてどうかというのをお伝えできると思いまして」

M&Aを進めるなかでお互いの認識違いによるトラブルを防ぐためにも、上記のような質問事項を事前にまとめておくことは大切です。質問事項をまとめてトップ面談を有意義な時間にしましょう。

5-3. 自社の情報を整理する

トップ面談では、相手企業の経営者から自社の企業情報について質問されることも想定されます。これに備えて、事前に自社の基本情報を整理し、説明できるようにしておくことも大切です。

具体的には、創業の経緯、事業概要、財務状況、従業員数、拠点など、自社を理解するための根幹的な情報をまとめます。また、業績推移とその要因分析、自社の強みと弱み、今後の事業方針なども整理しておきましょう。また、トップ面談の際に用いる自社の概要についても資料も用意しておきましょう。

また、中堅中小企業においては、「社長」の及ぼす影響力は非常に大きいとされています。ある上場企業のM&A責任者の方は、「中堅中小企業のM&Aは、会社に投資するという意味合いより、『社長個人』に投資する、と言う意味合いが強いケースも多い」と仰っています。そのため、譲渡企業としてだけではなく、ご売却される社長個人としても、情報を整理し、しっかりとお考えやご状況をお伝えすることが、トップ面談を有意義にすることに繋がるでしょう。

5-4. トップ面談の日程を調整する

トップ面談の日程を調整することも事前準備の1つです。経営者は多忙であるため、早いうちからトップ面談の日程を調整しておきましょう。M&A仲介会社にM&Aのサポートを依頼している場合は、M&A仲介会社がトップ面談の日程を調整してくれます。

トップ面談を実施する前には、情報収集や質問事項のリストアップ、社内での方針確認など、一定の時間が必要です。そのため、トップ面談の日程を調整する際は、譲渡・譲受企業が十分な準備期間を確保できるよう、余裕をもった日にちに設定することが大切です。

6. 【譲渡企業】M&Aのトップ面談で気をつけるべき4つのポイント

M&Aのトップ面談で気をつけるべき4つのポイント

M&Aにおけるトップ面談は相手企業に「この人がトップの会社ならM&Aを実施してもよい」と思わせることが重要です。特に譲受企業は、譲渡企業の買収によるリスクが大きいため、慎重に見極めてくるでしょう。

トップ面談で譲渡企業が譲受企業の経営者の信頼を勝ち取るには、以下の4つのポイントを押さえることが大切です。

  • 基本的に条件交渉はしない
  • 一方的に話をしすぎない
  • 質問には正直に回答をする
  • 要望や質問に対して前向きに回答

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

6-1. 基本的に条件交渉はしない

トップ面談の場では、具体的な条件交渉は行わないことが一般的とされています。条件面での議論に終始すると、お互いの経営理念や人間性を確かめ合うという本来の目的を見失ってしまう恐れがあります。

それだけではなく、条件交渉では金銭的な内容の交渉が先行しやすく、相手企業が不信感を抱く可能性があります。お相手様に不信感が芽生えてしまうと、せっかくの良いご縁であったとしてもM&Aを実現することが難しくなる可能性もあります。そのため、金銭的な交渉はある程度信頼関係が構築された状態で実施することが大切です。とは言え、金額を含めた条件は非常に重要であることも事実です。そのため、トップ面談は、経営者同士の価値観をすり合わせる大切な機会である、ということを理解した上で、具体的な条件交渉はトップ面談後に、信頼できるアドバイザーと何度も議論を重ね、準備をした上で行いましょう。

6-2. 一方的に話をしすぎない

トップ面談では、譲渡企業の経営者が自社の事業内容や強み、今後の展望などを十分に説明する必要があります。譲受企業の経営者に自社のことを深く理解してもらうには、一定の情報提供は欠かせません。しかし、譲渡企業の経営者が一方的に話している状況にならないよう注意が必要です。

「一方的に話しすぎない」というのは、当たり前のことかもしれません。しかし、トップ面談という慣れない場においては意外と難しいことがあり、そのためには、前述の準備をしっかりするようにしましょう。

トップ面談のイメージは、「お見合いの場」と重なる、とよく言われます。かく言う私は、お見合いをしたことがないのでイメージになりますが、互いに初見である人同士が、互いに質問を重ねて理解を深める場がお見合いであると同じように、トップ面談も互いのバランスは重要だと言えます。

譲渡企業の経営者が一方的に話している状況になると、譲受企業が確認したいことを質問できなくなってしまい、譲渡企業の経営者にとっても譲受企業への理解が不十分となるでしょう。その結果、お互い消化不良のままトップ面談が終わってしまいます。そうなると、再度トップ面談を実施したり、そのまま進めてしまいM&Aが失敗に終わったりする可能性があるでしょう。

こうした状況を避けるためにも、トップ面談では「譲受企業の懸念点を解消する」という意識をもつことが大切です。

6-3. 質問には正直に回答する

トップ面談では、譲受企業の経営者から経営状況や財務状況などさまざまな質問が投げかけられます。こうした質問には、正直に答えることが大切です。事実とは異なる内容や大げさな回答をすると、トラブルに発展する恐れがあります。

例えば、譲渡企業の調査を行うデューデリジェンスで、事実とは異なる情報が発覚すれば、譲受企業が不信感をもち、M&Aが破談となるリスクも考えられます。こうしたトラブルを避けるためにも、譲受企業の経営者からの質問に正直に回答しましょう。

6-4. 要望や質問に対して前向きに回答する

こちらも当たり前のことのように思われますが、重要な点であると言えます。

譲受企業から具体的な要望や確認すべき質問が出た際は、「できません」といった断定的な回答のみ伝えることで、印象を悪くしてしまうケースがあります。できないことはできない、というスタンスで良いのですが、譲受企業として求めていることはその回答ではない、ということがあることを想定していただきたいです。

中堅中小企業の経営は、課題山積の状態であることが多いと思います。上場企業などに比べ、まだまだ未対応な事柄や実現できていない点があることは譲受企業としても理解をしているでしょう。その中で、譲受企業が確認をしたいと思っていることは、「この譲渡企業の社長は、M&Aで一緒になったあと、どのくらい協力的なんだろうか」ということです。これをもう少し紐解きますと、「できません」ではなく、「できませんが、○○のような形であればできるかもしれない」や、「できませんが、△△ということが原因なので、そちらについては一緒になってやってくれませんでしょうか」などの、将来を一緒に作っていくイメージを持ってもらうことが重要である、ということです。

譲渡企業の経営者が断定的な回答のみを行い、建設的な話の展開が少なかったことを原因に、譲受企業の経営者が譲渡企業について理解できず、M&Aが破談となったケースもあります。もちろん、実際とは異なる嘘をついてしまうと、発覚した際に譲受企業からの信頼をなくす要因になるため、実現可能な範囲で伝えることが大切です。私自身、M&A仲介の立場として何度もトップ面談を経験しておりますが、かなり奥が深いと思います。

7. M&Aのトップ面談当日の流れ

M&Aのトップ面談当日の流れ

トップ面談の際は、開始時間前に集合したら以下の流れで進めます。

1:名刺交換
2:各社が自社紹介
3:質疑応答
4:現場の見学等

トップ面談の参加者が集まったらまずは名刺交換を行い、自社紹介をします。自社紹介では、自社に関する資料を用いながらそれぞれ10分程度で紹介するのが一般的です。

自社紹介が終わると質疑応答やディスカッションを行います。事前に用意した質問事項をもとに、譲受企業の経営者に質問しましょう。

譲渡企業が製造業や小売業、飲食業などの現場を持つ企業の場合は、質疑応答のあとに現場見学を実施するケースもあります。ただし、基本的にこの段階で自社の従業員はM&Aを実施することを知りません。そのため、従業員が不審に思わないように細心の注意を払う必要があります。従業員への情報漏洩を防ぐために、現場が休みの日に見学を実施するといった工夫をしましょう。

8. トップ面談を成功させるためにM&Aworksをおすすめできる理由

M&Aworksは、M&Aの豊富な実績とノウハウを有するM&A仲介会社です。たくさんの経験を積んだM&Aアドバイザーが在籍し、トップ面談の適切な進行管理のみならず、事前の綿密な準備から事後のフォローアップまで、M&Aのプロセス全体をお客様に寄り添ってサポートいたします。M&Aworksが特に重要としていることは、事前の準備です。こちらの記事をお読みいただいてご理解をいただけたかと思うのですが、M&Aは事前の準備が最も重要な要素です。あらゆることにおいて、経験のあるアドバイザーが先回りをして準備のお手伝いをし、安全なM&Aを実現するためのサポートをさせていただきます。

9. まとめ

M&A トップ面談

トップ面談はM&Aを成功させるための重要な役割を果たす場です。この面談を通じて、お互いの経営理念や将来像を深く理解し合うことがM&A成功につながります。しかし、適切な準備をしていなければ、トップ面談の機会を最大限に活用することは難しいでしょう。

M&Aworksでは、豊富な経験を持つ専門家が、トップ面談を有意義な時間とするためにサポートいたします。加えて、お客様が希望とするM&Aの実現に向けて検討段階からの支援も可能です。M&Aを検討中の方は、M&Aworksにお気軽にご相談ください。

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